空家の解体に1億円!相続空家問題は地域経済を蝕む問題に

2033年には3戸に1戸が空き家になるという試算(野村総合研究所)もある中で、空家問題が様々な問題を引き起こしております。治安の悪化、災害時の災害の増幅、地方自治体の財政逼迫等々ありますが、今回は2019年10月29日に日経新聞の一面でも取り上げられた地方自治体の逼迫の話を取り上げたいと思います。

 

空家問題は何故発生するか?

 

私が空家不動産の専門家としてこの5,6年前から取り組んでいて空家問題の一番の原因は、相続問題と考えております。離婚、倒産、相続とネガティブな事象が不動産が動く3大原因と言えますがそれぞれに違いがあります。

 

離婚は揉めますが、熟年離婚以外では年齢的にもまだ若い方のケースが多く、どちらかが住み続けるか、売却かではっきりしており長期間空家になるというケースがありません。

 

一方、倒産は地方等の場合にはそのまま放置されて空家となる場合もありますが、現状では政府などの支援もあり倒産事例は減っており倒産夜逃げからの空家というケースは減っております。

 

 

廃業した工場跡で空家に
廃業した工場跡で空家に

 

 

 

一方、一番問題なのが、相続からの空家問題になります。私たちが5,6年前から相続空家問題に税理士やその他の士業の方たちと取り組んで来た際に一番厄介だったのが相続に絡む空家問題です。

 

相続に絡む空家問題は意外と長期化します。私が昨年取り組んで来た複数の案件は何故かどれも20年近く空家でした。

 

大体のケースが40代や50代で親を亡くし実家が空家になったけどそれの処分を後回し後回しにしていつの間にか20年が経過してそろそろ自分自身の相続も準備をしなければという時期に、ようやく自分の親の相続が終わっていない事を認識し始めるのです。

 

自分が親の相続を片付けないで亡くなったら、自分の子供たちが大変な苦労をするという事で重い腰を上げるケースが非常に多かったです。

 

特に、40代や50代であれば生活力もあり空家を一つ持つくらいのコスト負担をする余裕があったというのも原因かと思います。ただ、それも年金受給年齢に近づいてくると空家を保持するコストが相対的に重くなってきます。

 

空家(空き一棟マンション)の解体で1億円の日経新聞記事
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51480960Y9A021C1EA1000/?n_cid=NMAIL006

 

 

新宿区の老朽化し空家となったアパート
新宿区の老朽化し空家となったアパート

 

 

空家特別措置法でどうなったか?

 

空家特別措置法で放置され、地域の人々に危険を及ぼす可能性のある空家等を特定空家として認定して、場合によっては地方自治体で撤去の勧告を出して、それに従わない場合には行政代執行という形で解体してしまう事が可能になりました。

 

ところが、特定空家の認定が少しずつ進んでいってはおりますが、日経新聞の記事にも出ておりますが、行政代執行まで至るケースは1%前後と非常に低いのが現状の様です。

 

というのは行政代執行して費用を空家の所有者に請求しようにもスムーズに費用の回収ができないケースがほとんどだからです。

 

 

10年以上空家となっていた苗場の保養所
10年以上空家となっていた苗場の保養所で入り口まで草木が生い茂っていた

 

 

 

自治体の財政を蝕む空家問題

 

今後空家がどんどん増え、無責任に放置される特定空家が増えると行政が管理しなければならない不動産(負動産)が増えると自治体の財政はただでさえ社会保障の負担で重いので厳しくなります。

 

本来、他の事に使われるべき資金が空家対策にも使わなければならないとなると財政の面でも、自治体職員という人的リソースの無駄使いという点でも問題にもなります。

 

 

東京都内の空家戸建て(所有者不明土地か…)
東京都内の空家戸建て(所有者不明土地か…)

 

 

空家を減らすためには

 

空家を減らすためには、一番大切なのは空家問題の最大原因である相続問題を速やかに解消して行く様な取り組みをしていくことであると思います。

 

ただ、多くの場合には両親とも亡くなってしまってから相続問題を議論するのでは遅いのが現実です。

 

私は世代間の相続問題を解消するための準備は両親共に亡くなった後ではなく、むしろ両親共にまだまだ元気なうちにそれぞれの家庭の事情にあった課題を整理し考え、話し合い、合意し、将来の準備をしていく事が重要であると思っております。

 

まとめ

 

将来、多くの空家が行政代執行で撤去されていく世の中にするのでははなく、所有者個人個人やその家族が責任を持って資産を管理して行く必要がある。

 

それには相続問題の理解を深める事が重要であり、また、各家庭の個性に応じどの様な対応や対策を取るべきかはそれぞれの家庭の問題でもありますが、一般の方が単独で理解するには無理があります。

 

相続問題を事前に整理し、考える事が重要であり、その手助けを不動産の専門家としてサポートさせて頂ければと思います。(税務や法務上の問題はそれぞれの専門家と連携して対応いたします。)

所有者不明土地措置法で空家不動産は減るのか、不動産投資への影響は

空家不動産に関するニュースで廃墟から探検をしていた若者が転落して亡くなった事をご存知でしょうか?人の土地や建物に勝手に入った人が悪いのですが、一方、空家や廃墟をそのままに放置していた方に全く落ち度がなかったとは言えないかと思います。

 

廃墟での事故の記事はこちら
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190519-00022369-tokaiv-soci

 

そんなニュースがあるのと時を同じくして、5月17日に所有者不明土地措置法が国会通過。所有者不明の土地の売買に関して一部法制化されたという事です。

 

 

東京都内の空家戸建て(所有者不明土地か…)
東京都内の空家戸建て(所有者不明土地か…)

 

所有者不明土地

 

廃墟等の放置された不動産が上記の様な悲劇をもたらすのみならず、管理不十分な所有者不明土地は様々な問題を引き起こします。5月18日付の日経新聞によると、「相続で700人の共有になり、役10人の所在地が不明等のケース」もあるようです。

 

所有者不明土地がもたらす問題が顕著に取り上げられたのが東日本大震災の時でした。震災前は海に近いエリアが職住一体で利便性が高く、多くの人々はそのエリアに住んでおりました。

 

ところが、東日本大震災によって発生した津波のお陰で、職住を分けようという考えに至りました。漁業やその加工業の仕事は海沿いで行い、住居はその当時は山林等の未利用地を開発して住居エリアを造ろうという考えでした。

 

その際に立ちはだかったのが、相続等で所有者が不明となった所有者不明土地の存在です。所有者不明土地はその多くは相続人等の所有者を辿る事が出来ますが、その為には多大な時間と労力と費用が掛かります。

 

また、中には所有者不明土地に相続人がいない等の状態に直面する場合もありました。いずれにしても、今回の震災に対応しての開発をするのに、所有者不明土地は壁となって立ちはだかりました。

 

 

開発のために整地された土地
開発のために整地された土地

 

 

所有者不明土地のもたらす問題

 

所有者不明土地のもたらす問題は、震災等の災害時のみならず日本全国で静かに進行しております。所有者不明土地は現在九州の面積を超えて、今後は北海道の面積を超える広さになって、それが拡大し続けていると言われております。(一般財団法人国土計画協会で行われている「所有者不明土地問題研究会」の調査による)

 

所有者不明土地は多くの場合に相続が理由となっております。相続によって遺産分割協議の話し合いがつかない事でみなし共有という状態で不動産が放置されるのが一番の原因と言って良いかと思います。

 

東北の場合等では当初全く価値を持たなかった山林などの土地が、大震災の為皮肉にも価値を持つ土地と変わった事で権利の調整も手こずりました。

 

東京都内等の私の周りでも、東京都心にも関わらず蔦やその他の植物が建物に絡みつき数十年は人が出入りしてなかったのではという不動産に出くわすこともあります。それらの所有者不明土地は空家問題を引き起こし、地域の治安を悪化させ、防災に弱い街を造る原因になっております。

 

 

新宿区の相続物件解体準備中
新宿区の相続物件解体準備中

 

所有者不明土地措置法とは

そこで所有者不明土地措置法(正式名称:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)が出来たわけですが、その条件を満たす土地は全国の1%程度に留まるという事で膨大な所有者不明土地問題の解消には程遠いという事です。

 

そこで今後は予防策として2本柱の対策を考える様です。

 

1.所有者不明土地をつくらない仕組み

2.相続登記を義務化、土地所有権の放棄を認める

 

所有者不明土地を活用する仕組み

 

・共有者が不明でも広告・供託等で利用可能に

・所有者が不明でも水道管などの設置可能に

 

東京のマンション
東京のマンション

 

まとめ

冒頭にも指摘しましたが、空家は事件や事故の原因ともなりますし、災害時には誰も管理をしていない土地建物なので災害を拡大する要因にもなります。今後空家問題や所有者不明土地の問題は日本全体の問題であります。

 

空家対策で先行するイギリスでは一定の手続きを経て自治体が利用権を収容できる強い権限の制度があるそうです。日本でも参考に出来るのではという事です。

 

不動産投資という点では空家が多い自治体での不動産投資はリスクが他よりも
高いとも言えると思います。