複数の不動産資産運用法人による過剰融資

2019年3月2日付の朝日新聞デジタルによると一個人が複数法人を設立して、その物件購入で10億超の借入をしたが、新規案件をストップされて困っている方がいるそうです。信用調査の裏をかいた方法での物件購入な訳ですが、実際どんなものか概略をご説明します。(1法人1物件スキーム)

 

 

朝日新聞デジタルの記事はこちら
https://www.asahi.com/articles/DA3S13916120.html

不動産資産運用法人とは

 

資産運用法人として上場企業のオーナーなどが自社株を所有するのに利用していたスキームが不動産投資にも一般向けに流用されたものです。

 

以前は有限会社や株式会社が使われてましたが、最近では合同会社が使われております。

 

多くの場合、合同会社を設立してその会社が主体となって不動産投資やその他の資産運用を行う形です。この資産運用法人が1社で株主である個人は、それを利用して銀行から融資を受けて物件を買っている分には、通常の取引となり特段問題ありませんでした。

 

不動産投資
不動産投資

不動産資産運用法人による借入

 

それが今回どこを問題とされたかと言えば、同一個人が複数の資産運用法人を持って、個人の連帯保証をする形でそれぞれの資産運用法人で多額な借入をする際に、その人が関わっている他の資産運用法人を金融機関に状況を伝えなかったという点です。(1法人1物件スキーム)

 

各金融機関からすればAさんが「○○アセット合同会社」で話を持ち込んだ場合には、以前であればその人はその金融機関に一つの資産運用法人のみ所有してその運用の為の借入を依頼していると思ってました。

 

ただ、それもここ1年前後のスルガ銀行問題、TATERUの問題、レオパレスの問題等から変わってきています。

 

 

ローン返済予定表
ローン返済予定表

 

複数の資産運用法人利用による借入

 

資産運用法人が一社で金融機関も把握しやすかったのが4,5年前です。

 

ところが、このAさんが「△△アセット合同会社」や「××アセット合同会社」と複数の資産運用法人を持っており同様に他行から借入を行い、個人の連帯保証をしていたらどうでしょうか?

 

Aさんの個人の借入という点では信用調査会社のデータ上は残らずに、各々の資産運用法人の融資残高だけが記録に残るという点を活用(悪用?)した方法になります。金融機関としては少し前までは個人の資産運用法人が他にあるとは考えてもいなかったのです。

 

私は信用調査会社のデータがどの様の出るのか100%把握しているわけではありませんが、個人での借入の場合にはAさんという個人でどれだけ借り入れがあるかという事が名寄せ出来ると聞いております。

 

ただ、株主である各資産運用法人の連帯保証をしているという点が借入をしていると同次元で信用データに反映されていない様なのです。

 

ある意味、元金融機関出身者が融資の裏側まで熟知した悪知恵から始まったスキームとも言えます。

融資申し込み
融資申し込み

 

複数の資産運用法人利用による借入による問題

 

複数の資産運用法人を使っての不動産投資の問題点は、これから融資を行う金融機関としては個人の信用状況を把握出来ない事があります。また、不作為と言えども情報を提供しない個人は悪意を持って盲点をついてきているところが問題です。

 

借入が無いと思って融資をする銀行からすれば、借入と同じ意味を持つ連帯保証が他の資産運用法人に出されておる状態になります。

投資用不動産市場に及ぼす影響

 

とは言っても、投資用不動産市場にこの様な裏技というかスキームが塞がれた事による影響はあまり大きくないと思っております。そもそも、5社、10社と複数の資産運用法人を設立して不動産投資をしていた人はそれ程多くありません。

 

また、新聞記事では最近出たので最近の事象に思われますが、実はこの2年ほど前から私共や他の不動産会社も問題だと認識しておりました。

まとめ

 

今までこの様な悪いスキームをしてこなかった方にはチャンスが巡り易くなるかもしれません。スルガ銀行の問題もまともにやって来た方にはあまり問題ありませんでしたし、正常化の過程で出てきた膿と考えれば良いかと思います。