世界不動産バブル崩壊(2)

中国不動産マネー急減速
中国不動産マネー急減速(日経新聞6月17日)

 

 

先日中国不動産バブル崩壊のコラムを書きましたが、その数週間後の6月17日付の日経新聞(国際4面)でしっかりとした記事が出ていましたのでご紹介します。

 

世界の不動産市場で中国マネーの勢いが弱まっているという事で、2019年1月~3月の第一四半期のアメリカ不動産投資額の推移を紹介しておりました。その記事によるとアメリカへの中国マネーによる不動産投資はなんと前年同期比で7割減に落ち込んだという事です。

 

世界の不動産価格を引き上げた中国マネーの行方が重要な訳ですが、実は前回のコラムでも書いた通りアメリカでも欧州やオーストラリア等でも減速が鮮明だという事です。

 

 

アメリカ不動産投資(カリフォルニア州物件)
アメリカ不動産投資(カリフォルニア州物件)

中国人投資家による世界の不動産投資

 

アメリカ調査会社のリアル・キャピタル・アナリティクス(RCA)が一定額以上の不動産取引データを調べたデータによると、2018年中に中国の投資家や企業が世界の主要地域の不動産を購入した金額は前年比で46%減少したそうです。これは中国国内を除くそうです。(日経参照)

 

中国人投資家によるアメリカの不動産投資

 

アメリカの不動産投資は2019年第一四半期は6億4000万ドルと前年比で72%減少し、ピークの2016年第3四半期の10%程度の水準まで落ち込んでいる様です。

 

私がアメリカ不動産投資を始めたのが2012年頃でしたが、不動産投資開始当初は中国系とはバッティングしませんでしたが、2014,5年位から結構彼らの動きを聞くようになりました。その頃も追加でアメリカの不動産を買おうとしておりましたが、既に価格が上昇し始めておりましたので私は自重しました。

 

日経によると2015年頃から中国系の投資家によるアメリカの不動産投資が目立ち始めたようです。

 

カリフォルニア州海岸沿いのお洒落な住宅
カリフォルニア州海岸沿いのお洒落な住宅

 

 

中国の投資制限

 

日経によると2017年後半に流れが一転したそうです。RCAのシニアバイスプレジデントのコメントを以下の様に紹介しております。「中国当局が人民元の歯止めをかけ、投資制限を強化した。」トランプ大統領が誕生し、米中貿易戦争も米国投資の心理的な障壁になっているのは想像に難くないです。

 

中国人投資家による売却

 

中小法人や個人投資家とやり取りしている私達の感覚とは若干ずれますが、日経によると大手中国資本の不動産売却が急増しているそうです。(私達は超大手に不動産投資をサポートしているというよりは個人だったりオーナー法人の案件をやっておりますからそれ程顕著な中国人投資家の変化を日本では感じられません。)

 

ただ実際は、当局が特に大手法人に対して圧力をかけて海外投資を控えさせている様です。その為、海航集団という企業グループ等はアメリカで総額1600億前後の物件を2018年に売却した様です。その他、英国のFTの情報によると安邦保険という政府管理下に入った法人もアメリカの高級ホテルの売却交渉を始めたそうです。

 

カリフォルニア州不動産投資
カリフォルニア州不動産投資

 

中国人投資家によるオーストラリア不動産投資

 

前回のコラムでも書きましたが、徐々に下火になってきております。実際日経によると2018年6月までの1年で許可された不動産投資は17%減となりました。オートラリアの件は前回のコラムを参照ください。

 

世界不動産バブル崩壊

中国人投資家によるカナダ不動産投資

 

カナダも中華系の多いバンクーバー(別称ホンクーバー(香港みたいに中華系が多いという事でカナダ人が使いますが))やトロント等の不動産ホテルや高級住宅への投資熱が急減しているそうです。

 

中国人投資家による日本の不動産投資

 

日本の不動産に関しては中華系の方の買いは以前程の勢いはなくなりましたし、売却される方も多くおります。ただし、欧米に比べてマイルドな日本の対中姿勢も影響しているのか投資自体は継続しているという印象です。(京都町屋、東京浅草、北海道ニセコ等がその代表的なところです。)対米関係に比べて対日関係が良好になりつつあるので特に売却を急ぐという印象はありません。

 

北海道ニセコの不動産投資
北海道ニセコの不動産投資

 

 

まとめ

前回のコラムでも書いておりますが、私は世界の不動産バブルの牽引車が中華系の投資家だったと思っておりますのでその動向を注視しております。それを見る限り世界で起こった不動産バブルの崩壊が近くあるかもしれないと感じております。

 

日本の不動産価格が上昇した一つの大きな原因が世界の他の地域に比べて優良な不動産が安い、利回りが高いというのが理由でした。その理由がなくなった時に日本の不動産を持ち続ける意味があるのか…そう思っております。つまり、世界の不動産が下落したら、日本の不動産も下落すると思っております。

海外不動産を見ると日本の不動産が分かる?

直近日経新聞の一面にグローバルな不動産市場に変調が見られるという記事が出ておりました。どの様に読み解くか…

 

日経新聞2019年2月24日で詳しく取り上げられています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO41681680T20C19A2MM8000/

グローバルな不動産市場の過去の牽引役

 

グローバルな不動産市場の過去の牽引役が誰だったかをまずは考えてみたいと思います。グローバルな不動産市場の明らかな牽引役は3つのカテゴリーに分けられます。1.機関投資家による投資2.オイルマネーによる投資3.中華系の方の投資の3つのカテゴリーが世界の不動産市場を引っ張ってきました。

 

日本の不動産の行方
日本の不動産の行方

機関投資家による投資

 

不動産REIT等の機関投資家による投資は現在のところあまり大きな変調は見られないというのが正直なところです。

 

アメリカのFRBをはじめとした中央銀行の緩和姿勢が大幅に変わっていない事から安定度の高い不動産投資に機関投資家のマネーは引き続き入ってきていると思われます。但し、日本でもそうですが不動産価格が上がり過ぎた為にこれ以上の上値を機関投資家が追ってくるかと言えば疑問です。

 

資金は潤沢にあるが、買いたいレベルの物件が無いという話を聞くことが富に多くなっております。

 

 

日の入り直前か?
世界の不動産市場も、日の入り直前か?

 

オイルマネーによる投資

 

 

広い意味でのオイルマネーの投資は特にロンドン等の世界的な都市で非常に力を発揮しました。ロンドンの不動産等はロシアや中東等のオイル関連マネーによる投資が盛んだったと数年前には言われております。

 

ただオイルマネーに関しては100ドル以上だったオイル価格が50ドル前後で推移するようになり、新規のオイルマネーによる投資は下火になって来たようです。

 

フィンランドのお客様はロシアマネーによる投資がフィンランドや北欧の都市でも活発であったと言っておりましたが、今は大分変ってきたかもしれません。

 

中東の対ヨーロッパ投資下火にの記事参照
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41058800Y9A200C1000000/

 

中華系の方の投資

 

 

中国人を含む中華系の方の買いは非常に活発でした。ビザや永住権が取れる関係でカナダやオーストラリア等が特に人気でしたし、それが他のエリアにも飛び火しました。その一部が日本にも来ました。シンガポールや香港に代表される中華系のエリアの大都市は非常に高い価格で不動産が推移した為、代替的に投資できる場所として東京をはじめとする日本の都市にも資金が投下されました。

 

ところがオーストラリアでは昨年7~9月の住宅価格指数が前年に比べて1.9%下がったそうです。実に6年ぶりの下落だという事です。(2019年2月24日付日経新聞)

 

中国政府が資本の流出を規制した事も1つの要因の様です。米中貿易戦争もあり、中華系の方の投資が益々増えて行くというよりはピークは過ぎたと考えるべきかと思います。

 

また、中華系の方の投資は、米中貿易戦争のお陰でかなり大きな変化を遂げてきつつあります。

 

ファーウェイの役員がカナダで逮捕されたり、オーストラリアで著名な中華系の投資家が入国禁止になったのをご存知だと思いますが、中華系の方がこぞって購入していたカナダやオーストラリア等の国々で危機感が高まって来ております。

 

また、地元住民との摩擦も大きくなってきました。

 

不動産価格が上がれば良いかと言えば地元の人達は居住する為の物件が減少し問題となっておりました。

戸建不動産も余ってくる?
戸建不動産も余ってくる?

日本の不動産市場への影響

 

 

日本の不動産市場に関しては機関投資家が好むような東京でも都心5区の商業エリアの物件は引き続き強く推移すると思われます。銀座や渋谷などの繁華街になります。

 

一方、東京都でも戸建てエリアはもとより、タワーマンションエリアも頭打ち若しくは下落基調に入ってきていると思われます。特に海外の一等地との比較で買われていた物件等が中華系の方の投資等が鈍化している状況の為その動きは顕著になってくると思います。

 

数年前なら香港やシンガポールの一等地は2%前後の利回りで、それに引きずられて都内のマンションが安いと言われておりましたが、基準となる香港やシンガポールの不動産市場が頭打ちになってきているようですので、これ以上の上昇は難しいでしょう。

 

消費税の増税前の駆け込み購入も今回は今のところあまり見られません。

 

結論としては、「日本の不動産が海外に比べて安い」と言って買いあおっていた先が多かったと思いますが、実際は海外の不動産が安くなってきて、日本の不動産も銀座などを除いて連られて下がり易いというのが現在の状態かと思います。

 

「オリム(ン)ピック以降の不動産価値が下がる三つの理由」にも書いてますので、気になる方は読んでみてください。
https://www.minato-am.com/booklet/1